笹屋伊織のどら焼

毎月20日21日22日は「どら焼」の日です。

10月 「おいしいお菓子」

京都の販売スタッフは、面接から採用、そして百貨店の売り場に立つまでの教育を私が担当しておりますので、スタッフがお客様から褒められる事は、お菓子を美味しいとおっしゃってくださるのと同じくらい嬉しく思います。そんなスタッフから、よく相談を受けます。仕事のことから、人間関係のこと、そして恋愛などプライベートな話に至るまで、「ちょっと今よろしいですか?」と、 気軽に打ち明けてくれるのは、私にとって嬉しいことです。

先日は、「私は販売に向いていないと思うんです。」という悩みを聞きました。「なんでそう思うの?」と尋ねますと、彼女は、お客様にお勧めする時に自分が好みでないお菓子を「美味しいですよ」と言えない・・・と言うのです。また、自分は美味しいと思っているお菓子でも、お客様のお好みに合うか分からないと。
真剣な顔で話す彼女を微笑ましく思いました。私自身、もう少しお上手が言えたら…と感じているので、彼女の気持ちがよく分かります。

確かに「美味しい」という言葉は、最高のセールス・トークかもしれません。でも、売るために思ってもいない言葉を使うのは、好きな仕事を苦しくさせます。お菓子には好みがあって当然なので、自分が美味しいと思わないのなら使う必要はないのです。
お客様は真実の言葉を求めておられますから、自分は思わなくても、例えば、「私の母が好きなんです。」とか、「ご年配の方がよくお買い求めになられます。」とか自分の言葉でお勧めすれば良いのです。
そして、自分が好きなお菓子は自信を持って「お好みはあるでしょうが、私は好きです。美味しいですよ。」と言えば、「美味しい」という言葉が生きてきます。

もう15年ほど前になりますが、私が野村証券で働いておりましたときに、ご新規で来店されたお客様から、「コツコツと貯めたマンション購入の頭金を払込日まで預けたい」と相談を受けました。「1か月で1円でも利息の高い貯蓄を教えてほしい」との熱心なご夫婦に私は、同じ貯蓄でも野村より少し利息の高かった隣の証券会社を案内して差し上げました。

お客様は、一度はそちらへ向かわれたのですが、まもなく私のところへ戻って来られました。「多少の金利の差なら、あなたにお任せしたい。」とおっしゃって。1ヶ月経ってご資金を引き出された後も、次々に新規のお客様を紹介してくださいました。

その場限りの適当な言葉を並べるより、お客様のお好みをお伺いし、それに合った商品をお勧めする事が、結果、お客様の信頼を得て、永いお付き合いを頂けることにつながります。そんな話を1時間ほどしましたでしょうか。彼女の表情が、ふっきれて明るくなりました。きっと、自分の性格を生かした販売スタイルを見つけ出してくれるでしょう。

こんなふうに彼らの話を聞いて、一緒に考えたり、アドバイスしたり…と、自分ではお姉さんのような気分でいるのですが、お客様からは、ちょくちょく「よう似たはりますなぁ〜 女将さんの娘さんですか?」と、お母さんに間違われることもあります。私、笑っていますけど、実のところ「結構ショックなんです。」

ちょっと独り言

10月になり、店先はすっかり秋の色です。秋のお菓子は美味しいですね。よく、「いいなぁ〜和菓子が食べ放題で」と羨ましがられますが、案外、食べないものです。特に主人は、試食以外ではほとんど口にしません。しかし、この季節になると必ず「おどり舟」を切って欲しい…と言います。今日も、お遣い物に「おどり舟」を持って出かけました。10代目が「美味しい」と申しておりますので、私も自信をもってお勧めしている逸品です。どうぞお試しあれ。

おどり舟

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