本場で勉強したくて京都を選んだ。
製造部門に勤め、一人前の職人を目指す岐阜県出身の川合さんは、 「小学生の頃、修学旅行で京都に来たときに和菓子職人の実演を見て、それから和菓子に興味を持つようになりました」と、熱く語る。 その時の感動を忘れられず高校卒業後、京都の製菓専門学校の和菓子コースに入り、インターンシップをきっかけに笹屋伊織へ入社した。 製造部門はやはり経験者でなければという印象を受けたが、それは違うと川合さんは答えた。 「活かされる部分もあるが、大事なことは入社してから身につけました。和菓子作りには体力が必要な面もあれば、繊細な作業もあります。 なので男女かかわらず、未経験でもできることはたくさんあります。その中で、少しずつ和菓子を知っていけばいいと思います」。
そんな川合さんが2年目の頃に、ある転機があった。
百貨店のイベントでマンガ・アニメのキャラクターをモチーフにした創作和菓子を制作することになり、社内コンペで自身の作品が選出されたのだ。
「『初音ミク』というキャラクターをイメージした和菓子を創作しました。誰が作ったのか知らずに社長が選んだのが、自分の作品でした」。
川合さんが製作した和菓子は百貨店で展示され、各方面から好評の声をもらえたという。
「まだまだ新人なのに面白いことをさせてもらえました。普段の業務でも声をかければどんどんやらせてもらえ、
できなかったことができるようになる瞬間が楽しいです」と、まっすぐな目で話してくれた。
笹屋伊織でどんな職人になりたいかと聞くと、「昔の良さが固い形で残っているので、
現代風の新しい方向性の和菓子を作っていきたい」と意気込んでくれた。
老舗の和菓子屋であっても、未経験からステップアップし挑戦できる環境があるからこそ出てくる言葉だ。